一部支配者層が民衆を支配する全体主義国家の政府にとって、最も恐ろしいのは国民の間に国外の実情という情報が広まっていくことではないでしょうか?
いまや世界全体に普及したインターネットは、国境を超えて自由に世界中のあらゆる情報を集めることのできるメディアです。
2010年から2012年にかけてエジプトやリビアを中心にアラブ世界で起こった大規模な騒乱『アラブの春』でも、インターネットが重要な役割を果たしたと言われていることは、耳に新しいところですね。
しばしば、全体主義的な国家では、民衆に対しインターネットの利用を厳しく制限する政策がとられます。
キューバもまたそうした国のひとつですが、そのキューバで現在製作されているインディーゲームがクラウドファンディングを開始したことで話題を呼んでいます。
■キューバは世界でも最もインターネットの規制の強い国のひとつ
日本人の視点から見た場合、インターネットに対する規制の厳しい国と言うと、まず思い出されるのは中国や北朝鮮ではないでしょうか?
中国でネット検索最大手の百度(バイドゥ)で「天安門」を始めとする政治に関連する多くの用語に規制がかかっていたことは、日本国内のニュースなどでも伝えられた通りです。
日本人にとってあまり馴染みのない話ですが、実は北朝鮮や中国以上にネット規制が厳しいことで知られる国が存在します。それがキューバです。
キューバでは、インターネット接続サービスを国営企業Etecsaが事実上独占していますが、この会社はネットへの接続料金を法外な価格に設定、Wi-Fiスポットへの1時間あたりの接続料金は一般的なキューバ国民のおよそ一週間分の所得に匹敵するものでした。
これは一部富裕層を除く国民に対し、事実上ネットアクセスを禁止するのと同じことでした。
しかし、2015年になって、キューバにおけるインターネットの規制に変化が生じ始めました。
2014年12月、アメリカのオバマ大統領とキューバのカストロ国家評議会議長は国交正常化に向けた交渉を開始したことを発表、翌年5月にはアメリカがキューバに対する「テロ支援国家」の指定を解除、7月には両国に相互の大使館が開設され、54年ぶりに国交正常化することになりました。
こうした政治状況の変化を受け、キューバ国内でのインターネット規制にも緩和されることになりました。
EtecsaはWi-Fiスポットの接続料金をそれまでの半額に値下げすること、公園等の公共エリアへのアクセスポイントを新たに設置することを発表しています。
とは言え、庶民にとってネットへのアクセス料金が超高額であることには変わりありません。
現在も、キューバにおけるインターネットの利用は、USBメモリにダウンロードしたコンテンツをオフラインで閲覧するのが主流であるといいます。
■困難に挑むキューバのインディゲーム開発者
キューバ国民のインターネットの利用が困難な状況は続いていますが、そんな情勢下にあるキューバでクラウドファンディングを利用して資金調達してインディーゲームの開発に挑んでいる開発者がいます。
そのゲームのタイトルは『Savior』。
開発を手がけるのはEmpty Head Gamesというデベロッパーです。
『Savior』は2Dグラフィックのアクションゲームで、そのデザインや色調は、日本やアメリカ製のタイトルにはない新鮮なセンスを感じさせるものがあります。
『Savior』のクラウドファンディングはindiegogoで行われており、目標額10000ドルに対し、2016年10月末現在で8000ドル近い金額の調達に成功しています。
プラットフォームはPC/MACで、2018年にリリースを予定、2017年2月にはプレイアブルデモの配布も行うとのことです。
キューバ初となるインディーゲーム『Savior』。
これからの展開がとても楽しみですね。