『ピンボール』ってご存知ですか。
盤面の上から転がってくるボールを打ち返しターゲットに当てるゲームです。
アプリでも色々なものが出ていますのでゲーム内容をご存知の方は多いと思いますが、あれの実物となると見たことのある人は少ないのではないでしょうか。
■オブジェとしても映えるのが『ピンボール』の特徴です
1931年に「バッフルボール」というピンボールが発売されました。
この頃はまだ打ち返し機能も電飾もなく単にボールを打ち出すだけのゲームでしたが、非常に人気が出たために、それにあやかろうと複数の会社がピンボール事業に乗り出すことになります。
1947年「バッフルボール」を作ったゴットリーブ社がフリッパーと呼ばれる打ち返し機能をつけたピンボールを開発、以後この機能をつけたものがピンボールの基本となります。
ピンボールの形は1947年にできあがりましたが、改良はその後も続けられ電子機器や技術の発展に応じて複雑化していきます。
盤面には彩る鮮やかなイラスト、さまざまな色を放つ電飾、派手な効果音、こった演出をするギミックなど見ているだけでも楽しくなるものばかりです。
またゲーム機正面にあるバックボックスと呼ばれる部分には、ゲームのモチーフとなったイラストや写真が飾られ、バックライトによって幻想的な光を放つようになっていました。
最盛期のピンボールは電飾が大量に使われていたことから、照明を落とした店などでは非常に映える存在となりました。
また、バックボックスにはめられたイラスト（バックグラス）も独特なものであるため、それだけを集めるコレクターもいるほどです。
このようにゲームができなくても飾りとして機能するのがピンボールの特徴とも言えます。
■『ピンボール』がなくなった理由
一番大きな理由がメンテナンスの問題です。
電飾やギミックが増えるにつれ構造は複雑化します。
盤面の下には何十もの電気配線が束になって張り巡らされ、盤面の上には造作物が二重三重と積み上げられています。
メンテナンスをする人はその複雑な物を見た瞬間に投げ出したくなるほど厄介な代物でした。
また使われている部品にも問題があり、スイッチではなく接点のついた銅板が使われているとか、メーカーから輸入しなければ手に入らないものがあるなど、状態を維持するのが非常に難しいゲーム機でもありました。
特にピンボールメーカーがほとんどなくなった現在では、交換する部品を手に入れることも困難となり、現在稼働できている物でもいつ止まるかわからないという状況に立たされています。
メンテナンスが行き届いていなければ面白さが半減するだけでなく、ゲームそのものができなくなってしまいます。
そのため故障となると早々に撤去する施設が多かったのです。
他に類を見ない貴重なゲームでしたが、その複雑化していく構造が仇となり消えていくことになってしまいました。
■『ピンボール』の現状
実物は数を減らしましたが、コンピューターゲームとして再現することは可能です。
これは早くから取り組まれており、1980年台には最初のピンボールゲームが登場します。
その後はWindowsのおまけについてきたり、無料ゲームとして配布されたりと、手軽に楽しめるゲームとなりました。
しかし現物の感触は小さなスマホやキーボードでは再現できず、実機に触ったことのある人にはどことなく味気なく、物足りないものです。
そう思う人が多かったのか、2008年、グローバルVR社が本物の台に32インチモニターを入れた『UltraPin』というピンボールを発売しました。
これは仮想ゲームでありながら実機の感触が楽しめるというもので、あの面倒極まりなかったメンテナンスという欠点を克服したものでもあります。
ただ残念なことに、日本には存在しません。
現在ピンボールメーカーは世界で1社、「Stern」のみとなっています。
昔の物を維持しているのではなく、新作を作り続けているメーカーさんとなります。
貴重なゲームとして末永く続いて行って欲しいですね。
（公式サイト）
Stern社
http://www.sternpinball.com/
