第二次世界大戦終結後の1940年代後半から1989年11月にベルリンの壁が崩壊するまでの約半世紀の期間、世界はアメリカを中心とする資本・民主主義陣営と、ソビエト連邦を盟主とする共産・社会主義陣営とに分断されていました。
両陣営による直接的な戦争行動は起きませんでしたが、核の脅威を含む戦争への緊張感が持続し続けたことから、この時代は「冷たい戦争=冷戦時代」と呼ばれています。
当時、共産・社会主義陣営にあった国々では、国家が国民を厳しく監視・管理する恐怖政治が行われていたことが知られていますが、冷戦終結から四半世紀以上経った現在、私たちはその時代の雰囲気をコンピュータゲームで体感することができます。
冷戦時代の管理社会をテーマとするゲームを紹介しましょう。
■アパート住人を監視しろ!! シミュレーションゲーム『Beholder』
冷戦時代、共産・社会主義陣営の国々では国家が国民を監視下において管理統制していたとされます。その恐怖はジョージ・オーウェルの小説「1984年」にも描かれています。そんな監視社会をテーマとしたホラーテイストのシミュレーションゲームが『Beholder』です。
『Beholder』はシベリアにあるゲーム開発スタジオ、Warm Lamp Gamesが開発中のゲームです。プレイヤーは国家から任命されたアパートの管理人として住人を監視下におき、スパイとしてその行動を探ることになります。
カメラを使って住人の行動を監視したり、時にはその部屋に侵入して、住人の行動を探らなければいけません。ときにはその身を危険に晒すこともあるでしょう。更に、プレイヤーは国家の思想を住民に刷り込み、教育することも要求されます。
プレイヤーは国家の命令で住人を監視していますが、一方ではアパートの管理人として、そのアパートの中では絶大な権限を持つことにもなります。住人たちの運命はプレイヤーの手にかかっており、時には国家の命令を無視して住人たちとの関係を構築、甘い汁をすするという選択肢を取ることも可能です。
『Beholder』は2016年10月現在、PCゲームのダウンロード販売サイトSteamでデモ版が配信中です。リリース予定を2016年秋としており、将来的には日本語にも対応の予定です。
■反体制分子の入国を阻止せよ!! パズルアドベンチャー『PAPERS, PLEASE』
管理主義国家にあっては、いきすぎた官僚主義の結果として役所の事務作業が煩雑化し、その処理能力が大幅に低下するとされています。そんな管理主義国家の入国審査官として日々無駄に煩雑化されていく事務処理と格闘するゲームが『PAPERS, PLEASE』です。
ゲームの舞台は冷戦時代の最中、1980年代の共産主義国家アルストツカ。
プレイヤーは新任の入国審査官として国境の検問所に着任します。国際情勢の変動に伴い、日々煩雑化していく入国審査のルール。最初のうちはパスポートを確認するだけの作業も、日を追うごとに必要書類や確認事項が増えていき、作業はどんどん複雑化していきます。
審査内容が複雑化すれば、それだけ審査に時間がかかり、ミスも増えるでしょう。審査にミスが生じればそれはプレイヤーの責任となり、罰金を徴収されることつながります。我が家に家族を抱える入国審査官であるプレイヤーにとっては給料が減ることは致命的、時には飢えと寒さから家族を失うことも。
一方で、入国審査を受ける人達の中には不正入国を試みるものも少なくありません。
審査官に賄賂を贈って入国手続をパスしようとする者や、中には破壊工作を行うために入国を試みる反体制分子もいたりします。彼らの入国を見逃すのも阻止するのも、プレイヤーの腕と判断に任されています。
このゲームを開発したLUCAS POPEは、かのアンチャーテッドシリーズを開発したNaughty Dogに所属していたこともあるプログラマーで、この『PAPERS, PLEASE』でゲームに関する数多くの賞を受賞、現在はインディーズの開発者として活躍しています。
『PAPERS, PLEASE』はインディーゲームのローカライズで知られるダウンロード販売サイトPLAYISMで入手可能、もちろん日本語対応しています。