職場や学校での人間環境や過剰な労働が原因で、うつ病を始めとする気分障害を発症する患者の数は増加傾向にあります。
2014年の厚生労働省の調査では、うつ病などの気分障害で医療機関に受診している患者の数は110万人を超えており、その3年前の調査結果に対し16%増加していることが判明しています。
社会的に気分障害の発症を予防するための具体的対策が模索される中、ゲームをうつ病対策に用いようという試みが注目されています。
認知行動療法に基いて制作されたゲーミフィケーションRPG「SPARX」とは、どのようなゲームなのでしょうか?
■認知行動療法って?
認知行動療法とは心理療法の一種です。
ここで言う認知とは「現実の理解の仕方」や「物事の見方」を意味する言葉と思ってください。
人間の認知の働きは、何かしらの出来事に対して瞬間的に生じる思考やイメージに基いており、この瞬間の反応を「自動思考」と呼びます。
「自動思考」に偏りが生じるとストレスとなり、ネガティブな思考や感情といった形で心の働きに悪影響を与えます。
認知行動療法は、この「自動思考」のバランスを取ることでネガティブな思考や情動を抑制し、より良い状態を作ることを目的としています。
具体例としてはこんな感じになります。
夜道で迷っているところを想像してみてください。
あなたは一人きりで、身体も疲れ切っています。
そのような時、あなたはどのような思いを抱くでしょうか?
1準備不足だったことに落ち込み、憂鬱になる
2間違った道を教えた人がいたことを思い出し、怒りを覚える
3物音を聞きつけ、恐怖の感情を抱く
4遠くに明かりを見つけ、「これで助かる」と安心を覚える
同じ状況に置かれていても、それをどのように「認知」するかで、人の心のありようは様々に変化します。
行動認知療法は、よりポジティブでストレスを解消する方向へ物事を捉えられるよう思考を柔らかくするための思考法です。
■認知行動療法に基いて開発されたRPG「SPARX」
認知行動療法の理論を学び、抑うつや不安症を改善する対象法への理解を深めることを目的として制作されたRPGが「SPARX」です。
このゲームはニュージーランドが国家プロジェクトのひとつとして開発を進めたものです。
ニュージーランドは先進国の中でも10代の自殺率が高く、うつ病や不安症への対処が急務とされていました。
そこでオークランド大学の開発チームが制作したのが、この「SPARX」でした。
「SPARX」とは
Smart-賢い
Positive-前向き
Active-活動的
Realistic-現実的
X-factorthought-新しい考え方
という5つのキーワードの頭文字を取って付けられた名称で、その名が示すとおり、賢明で前向きな考え方の習得を目指すゲームとなっています。
「SPARX」は全部で7レベル(ステージ)から構成されています。
ゲームではまずガイドが登場、ゲームについての解説の後、プレイヤーが自分自身の分身となるキャラクター=アバターを作成、このアバターを操作してゲームを進めていきます。
ゲームの舞台となる国(ステージ)は以下の7種からなります。
洞窟の国:希望を見つける
氷の国:行動活性化
火山の国:感情のコントロール方法
山の国:問題の解決を試みる方法
沼の国:ネガティブな認知に気づく方法
橋の国:ネガティブな認知と戦う方法
渓谷の国:全てのまとめ
これらの国は皆気分のバランスが失われた危険な状態にあり、プレイヤーはそこでNPCとコミュニケーションしたり、パズルやミニゲームをクリア、あるいはGnatsというネガティブ思考(敵)を倒すことで、それぞれの国のバランスを回復するのです。
「SPARX」は現在iOS/Android版が配信されており、1080円でダウンロード購入することが可能です。
【iPhone/iPad】
https://itunes.apple.com/jp/app/sparx/id1111456634
【Android】
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.smileboom.SPARX&hl=ja